土曜日は、PHI Pilates Japan Festaでエネルギーワークについて話しをさせて頂きました。エクササイズ・ムーブメント系のセミナーでエネルギーワークについて話しをしていくのはあまり無い機会なので、こういった機会を頂けたことは本当に嬉しく思います。肉体を扱っていると、あまり触れる機会が無いエネルギーワークを、体は肉体だけではない所の影響も受けているんですよ、という内容で紹介させてもらいました。セミナー中は参加者の方々の反応が読めなくて、「あらら、どうしたもんかな、、、(頭ぽりぽり)」という感じでしたが、夜の懇親会の時には色々な人が「面白かったです!」と言いにきてくれたので、一安心です。セミナーがキッカケに、色々な事がシフトしていってくれれば良いですね。
さて、セミナー中に二人にデモをさせて頂いたのですが、二人目のデモが凄くIMACの思考プロセスを説明するのに良い例だったので、紹介させて頂きます。セミナーに参加されていた方は、これを見る事で良いまとめになるかと思います。IMACに興味のある方、すでにお申込みしてくださった方は、こんな事を学び、こんな事ができるようになるんだ、と楽しみにしてもらえれば嬉しいですね。
まずは、全体を把握するために姿勢評価から始めました。ピラティスをされている事もあり、全体の姿勢は綺麗な印象。目立った所は左肩が上がっているのと、両腕と脇のスペースで左右差(右腕の方がスペースあり)がありました。また、少し胸郭が後傾気味で、肋骨下部に呼吸が入っていない感じがあり、正しい位置に持っていくと呼吸が深くなる状態でした。
次に、可動域評価。体幹の可動域を取ると、左の回旋と、若干左に回旋した位置での体幹の屈曲(前屈)で制限がありました。また、股関節は両側で屈曲に制限(約60°でバリア)。最後に、左肩の屈曲制限も右に比べると少しありました。
まず体幹の左回旋と前屈に制限があるという事で、右外腹斜筋・右腹直筋・左内腹斜筋などの機能不全が考えられます。実際に筋テストしてみると、右外腹斜筋が弱かったです。よって、ここまでの情報から右側の体幹に何かあるな、と推測できます。姿勢評価で見れた内容とマッチしていますね。
股関節屈曲制限もあったので、大腰筋と腸骨筋もチェックすると、両側共大腰筋と腸骨筋は確り働いていました。ここから、大腰筋・腸骨筋部分を除外していくことができるので、右体幹全体というよりは胸郭下部の方に焦点を当てていく事ができます。そして触診していくと、骨盤のバランスは良いものの、胸郭下部の右側でスプリングテストによる柔軟性の低下が見られました。また、肝臓の部位が少し熱を持っていた感じだったので、ここまでの情報で、「肝臓を中心に、胸郭右下部、外腹斜筋の近位付着部」に何かあるのだろう、と考えていく事ができる訳ですね。
ここまでの評価をまとめると、
姿勢評価:
・左肩上方、胸郭の左右差、肋骨下部機能制限
可動域制限:
・体幹左回旋、左若干回旋位屈曲
・股関節両側屈曲
・左肩屈曲
神経筋テスト:
・右外腹斜筋陽性(弱い、機能不全あり)
・両側大腰筋・腸骨筋陰性(強い、機能不全なし)
触診:
・骨盤スプリングテスト陰性
・胸郭下部スプリングテスト陽性
・肝臓に熱
以上の情報をもとに、体全体の中から下図の黒丸の部位に絞り込んでいけた訳です。
ここでワークが必要な部位がある程度絞れたので、実際に触診を評価的なものから治療的な方へスイッチしていくと、肝臓周囲の筋膜ではなく、肝臓の中に引き込まれていく感じでワークが始まってしまいました。これは、モーティリティなども感じられないと少し評価するのが難しいので、経験が必要になってくる部分ですが、肝臓内の生理学が変化するのと共に、後部棘筋周辺から仙骨へ繋がる筋膜へのリリースも同時に起こりました。呼吸が入るようになったので、そこの部分のプロセスは終了。
アプローチの効果を確認するためにもう一度可動域をとってみると、左肩の可動域制限・両側股関節屈曲の可動域制限が改善していました。また、体幹の左回旋と外腹斜筋の働きも向上していました。つまり、上でまとめた機能不全が見られた部分は全て改善していた訳ですね。ここまで一箇所でのアプローチでバッチリ変わるケースも珍しいですが、デモだとあり得ます。笑
実際にデモを見ていないと、可動域の変化、筋力の向上を実際に見れないので衝撃があまりないかもしれませんが、ここで重要なのはワークをした部分以外も変化するという事と、実際にワークした事で変化が起こっているかを把握できる所ですね。今回のケースでは、肝臓周辺へのアプローチで、股関節の可動域と肩の可動域にも変化がでました。なぜでしょうか?
肩の可動域向上は比較的簡単に考える事ができるでしょう。構造的に胸郭右下の制限が取れたので、胸郭左上・肩へのバランスも変化し、動きが向上した事が想像できます。股関節の可動域向上は、中医学の肝経の繋がりからも理解できますし、肝臓のリリースと共に横隔膜の動きが向上し胸腰移行部の位置が変化した事により、大腰筋のレバーとなる部分が変化し機能できる可動域が向上した可能性もあります。また、神経的にも肝臓にあった制限が取れた事で、自立神経系が調整され、全体的にリラックスしたから可動域が向上した可能性もありますね。
こうして書いてあるのを読んでいくと複雑な印象を持つかも知れませんが、この部位を探し出すまでのプロセスは慣れて来たら5分もかかりません。デモ全体で説明しながらアプローチまで行っても15分かかりませんでした。内臓マニピュレーションの全体傾聴から局所傾聴でも同じように肝臓に行き着いていたかも知れませんが、その変わりに可動域や筋テストを使う事で、触診の経験が未熟な人や、動きを中心にワークをしている人たちでも、客観的に評価していく事ができます。もちろん、今回はたまたま内臓でしたが、筋骨格筋の問題の時も把握しやすいですね。クリニックなど複数の人が働いている場所では、上のように情報を共有できる方法が触診による感覚以外の部分であると重宝しますよね。IMACでは、こういう内容を皆さんと共有させてもらいたいと思っています。ワクワクしませんか?難しそうかな?
全体像を把握するプロセスと、このような思考プロセスをイントロで学び、体幹・股関節・肩の細かい可動域、神経筋テストを下肢編・上肢編・体幹編で見ていきます。今回のデモでは行いませんでしたが、ここに脊柱の状態も把握していくと、そこからもどの部分に問題があるかの情報も入ってくるので、そういった内容と脊柱のメカニクスを脊柱編で見ていこうと考えています。
頭デッカチになると面白くないので、実際に体に触れる時間を長く取り、机上の勉強だと難しい内容をできるだけ楽しく面白く学んでいきたいと思っています。興味がある方は、是非詳細を見てみてくださいね。IMACのページはこちら。 また、今月の「TENの日」はこんな感じのデモを時間が許す限り行っていこうと考えています。11月、12月はデモの予定は無いので、実際にIMACのクラスが始まる前でのデモは今回で最後になってしまいます。また、10/10という事で、無料セッション券も抽選で当たっちゃうので、時間が許す方、興味のある方は是非ご参加下さい〜。