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執筆者の写真Hiroki Sato, MS, ATC, CR

閃く経絡

更新日:2019年11月12日



ダニエル・キーオンの「閃く経絡」を読みました。久しぶりに面白くて一気読み。でも、日本語版より、英語版の表紙の方が好きです(笑)。これは、ウィトリウィウス的人体図が何を象徴しているかがわからない人にはわからないでしょうけどね。日本語版でも、経絡の説明の挿絵がこれになっててテンション上がりました。

日本語版でとりあえず読んだんですが、これは英語の方が分かりやすいだろうな、という表現のところや、これは中国語のピンイン(英語の場合、漢字ではなくピンインで表記される)で読むより、日本語の漢字で読んだ方が分かりやすいだろうな、という所の両方があり、結局日本語版を読んだ後に英語版も購入しました。著者が折角冗談も含めて面白く説明しているところが、日本語訳だとかなり意味不明になっていて残念でした。ロスト・イン・トランスレーションですね。


この本は、イギリスの医師であり鍼灸師であるキーオン先生が、中医学における生理的働きや効果を西洋医学的に解説し、それぞれの関係を発生学と生理学を用いて説明してくれています。薬学、生理学的説明は、さすが医師だという説明の細かさで勉強になりました。しかも、説明がわかりやすくて面白いです。勉強になりました。しかし、救急診療専門医ということで、症例は急性の症状を緩和させるものが多く、体全体のバランスや関係性に関する内容は少なかったです。エネルギー、氣に関する考察も、今まで読んだ本と同じ感じで、特別新しいアイデアはありませんでした。また、陽経の経絡に関してはかなり解説が雑だった印象もあるので、今後もっと詳しくなることを期待します。

発生学に体の仕組みを解き明かすヒントがあるだろうと思い、経絡に体の繋がりを示す手がかりがあり、必ず両方に共通していて理論的に説明できるようになるものがあるはずだと私は思っていますが、そういった研究や探求へのキッカケになりそうな本ですね。

現在の筋膜(ファッシアとこの本では呼んでいる)と経絡の研究では、殆ど全てすでに実在している肉体と経絡の関係を見出そうとしています。しかし、この本の前半にもあるように筋膜を構成するコラーゲン線維と細胞外基質の圧電構造としての働き、そしてベッカー博士による直流電流の生態再生の効果なども知っていれば、経絡は肉体を作りあげる大元の流れとして考えてみても良いかも知れないですね。もし経絡が肉体を作るための指標としてある流れなのであれば、実際にすでに肉体化している組織に経絡が見つからないのも当然です。本書の最後にもありますが、「何を測定しているのか、を知ること」が本当に大切ですね。

ロルフィング®︎の創始者のロルフ博士も、体の電磁場、電気の流れと筋膜が関係しているだろうと考えていました。実際、ロルフィングのジャーナルでも今後ロルフィングを通してどのように筋膜系が構造化することで生態電磁場(Energy Field)に影響が出るか探求していきなさい、といった内容の記述があります(Rolf IP, Structural Integrations, June 2003)。私のクライアントさん達で長年鍼灸治療を受けている方がロルフィングを受けた後に、鍼灸師さんに体が変化しているのを指摘されることも多くあります。ロルフィングを受けたことは言っていないのに、です。筋膜と経絡は、関係が深そうですね。

ソースポイントセラピーを学んだ時にベッカー博士の本や、バー博士の「生命場」に関する本を読み、体に電気的な流れや電磁場が関係していることを知りました。マイナーですが、かなり昔からこういう研究はされています。こういった考えが主流になってくるのはまだまだ先だと思いますが、こうして臨床的に感じていることを実際に検証でき、理論的に説明できるようになってくると嬉しいですね。私がロルフィングを学び始めた時(2006年)に丁度筋膜に関する研究を集めた学会が開かれ、この本が英語で出版されたのは2014年です。この数年で、さらに色々な研究がされ、色々なことが分かってきているので、今後どんなことが明らかになってくるのか、楽しみですね!この本の中でも、お、これは面白そうだな、と思う論文が色々紹介されていました。

これからも西洋医学的に分かっていることから、東洋医学やより体全体の関係性も理解できるようになってくると面白そうですね!


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