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執筆者の写真Hiroki Sato, MS, ATC, CR

IMAC体験会 ケーススタディ2

更新日:2019年11月12日


昨日に引き続き、IMAC体験会からのケーススタディを紹介します。

今回は膝の痛みと違和感、コリコリ音が鳴るという実際の症状を訴えていた方の例です。

私の体の見方を紹介する良い例だと思います。

さて、膝にいつ頃から違和感が出たのか聞いてみると、1ヶ月前からのようで、曲げると痛く、膝を伸ばす時に変な音がするということでした。実際に少し腫れていたというので診させてもらうと、実際に膝の外側のところがまだ腫れている感じと熱感がありました。予想した評価としては、「膝外側部の滑液包炎」。私のバックグラウンドを少し説明しておくと、私はアメリカのアスレティックトレーナーの資格を持っているので、アメリカの大学・大学院で一般整形外科的障害の評価方法は一通り習っています。つまり、痛みをはじめとした症状がある時に、どういう怪我や障害があり、どう評価したら良いか知っている訳ですね。最近では以下で説明するような体の見方をしているので症状がある場所の診断・評価は特別していないですが、それでも知識としてあるのは便利ですね。

これはどういう症状かというと、膝には腸脛靭帯という結合組織が外側にあり、そこが膝の外側と擦れることで間にある滑液包が炎症を起こして痛みがでたり、動きの際に音が出たりするようになるのがこの症状の特徴です。結構腫れるのでビックリするのですが、腫れは関節の外側ですし、比較的すぐにひいていきます。そのまま動いていても急に凄く悪化する訳でもないです。ただ、かばったまま日常生活や運動を続けていき、慢性化してしまうと厄介ですね。図で表すとこんな感じです。


膝外側炎

さて、ここで問題になってくるのは、本来は擦れないはずの構造がなぜ擦れてしまっているのか、ということですね。そもそもの炎症が起こる原因になっているところを改善していかないことには、なかなか患部も良くならないですからね。

膝の痛みは骨盤・股関節のバランスの崩れが原因となっている時も多いです。仙骨がねじれていると、大殿筋を伝って腸脛靭帯のバランスの崩れにも繋がり、それが今回のような形で膝の痛みとしてでることは多いです。ランナーの方はこういった問題を抱えている人が多い印象もあります。簡単に図で表すとこんな感じですね。ニーブレースや膝に何か巻いてメカニカルな作用をずらすことで対処療法にはなりますが、それで騙し騙し頑張っていると、そのうち膝以外のところに痛みが出てくると思いますよ!


仙骨と大殿筋

実際に歩き方を少し見せてもらうと、右骨盤が前のまま(左の骨盤が後ろのまま)な状態だったので、骨盤周辺の動きに制限がありそうなのがみてとれました。また可動域を個別にみてみると、右股関節は綺麗に動いていて、各筋肉をチェックしてもキチンと働いていました。右膝に関わる可動域制限で唯一みつけられたのは、右脛骨の外旋制限と、外側腓腹筋の弱さだけでした。という訳で、症状がある所に動きの制限はあまりみられなかった訳です。良くあります。

実際の全体のバランスを表してみると、こんな感じでした。首の部分は胸鎖乳突筋の張りを表しています。


全体のバランス

前述したように右股関節と膝の動きにはあまり違和感はなかったのですが、左の股関節と体幹に動きの制限があったので、そちらに焦点を絞っていきました。

まず上記に説明したような大殿筋・骨盤由来の原因が考えられるので、そちらが働いているかチェックしました。まず可動域から左股関節の外旋、そして外転と外旋をチェックしてみると両方とも制限があり、うつ伏せで左股関節の伸展をチェックした時にも制限がありました。そこで左大殿筋を確かめてみると、特に仙骨部と腸骨部が働いていませんでした。そこで左大殿筋から仙骨・骨盤周囲に対してアプローチしました。

次に、体幹の左側屈にも可動域制限があったので、そちらをチェックしていきました。すると、(僕には)面白いことに、脊柱起立筋群は全て確り働いていました。しかし、腰方形筋と腹横筋、そして内腹斜筋が怪しい感じでした。これらの制限から、背部というよりは腹腔の内側、下行結腸あたりに狙いを絞ってアプローチしていきました。そのエリアで違和感のある部位を探していくと、下行結腸の腸骨綾に近いところと、腰方形筋周囲で混み合っている感覚がありました。その部位にアプローチしていくと二段階で熱が放散され、組織が緩んだ感覚がありました。熱がでてくる時は、筋膜同士が上手くスライドしていなかった部位が動くようになったり、結合組織が変化した時に多いです(実際に何が起こっているのかは分からないことが多いですけどね)。ただ、これは他人でも感じられる熱なので、見学していた人達にも感じてもらいました。

アプローチした位置と筋肉の関係を図で表すとこんな感じです。


最後に、首のバランスを整えて終了。

余談ですが、触っていた時の印象、変化のプロセス、可動域の制限から、元々の一番大きな制限は腹部の下行結腸と腰方形筋の部位で、大殿筋や骨盤の捻れは二次的な代償だという印象がありました。

終わったら、膝は触っていませんが、膝のコリコリする音は無くなっていました。ちょっと熱を持っていた状態もましになっていました。歩いた時にも、片方が動いていなかった骨盤が、両方とも綺麗に動いていました。膝に触れないで膝の状態が変化するのは、初めての方には理解してもらうのが難しい時もありますが、こうしてバランスを含めて考えていくとなぜか理解していただけると思います。

実際、受けてくださった方が今日感想のコメントをくれたので、引用させてもらいますね。

"初めて左右の骨盤が自由に動いています! 身体のことを考えるようになって、初めて、骨盤が独立して左右自由に動くということを体感しています。 膝周りの嫌な感じも順番があるようで、変化の途中です。 ただ、今日はいつまでも座っていられます。 スゴいですね〜! 逆に固まってしまわないように上手く動かないといけませんね。 本当にありがとうございます!"

変化を実際に体感していただけて、その状態を確認していただける感性を持っている方なので変化も大きかったのでしょうね。こういった感覚を覚えておいてもらうと、今後も楽な状態が続きやすいと思います!

さて、最後にロルフィングの考案者である、ロルフ博士の引用です。

"This is the gospel of Rolfing: When the body gets working appropriately, the force of gravity can flow through. Then, spontaneously, the body heals itself."

Ida P. Rolf

”これがロルフィングのゴスペルだ: 体が最適な機能を取り戻すと、

重力の流れが通り抜けるようになる。

すると、自然に、体は治っていくのだ。”

アイダ・P・ロルフ

今回の場合であれば、骨盤の位置が整い、体幹と股関節の動きが改善し、体が本来の位置に戻り本来の機能を取り戻していけば、自然と症状としてあった膝の部分も改善していくということですね。必ずしも膝に問題、制限があるのではないという良い例でした。

どういう考えで体にアプローチしているか少し分かってもらえたら嬉しいです。感想もシェアさせていただき、ありがとうございました!!

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